処刑場にて

処刑場の暗闇の中、月明かりが冷たい光を投げかけ、石畳に影を落としている。広場の中央には、斬首刑に処された本国の姫の遺体が無造作に横たわっている。彼女の美しい銀髪は血に染まり、その顔は死の冷たさに覆われている。かつての栄華と誇りは、今やただの哀れな姿に過ぎなかった。

姫のドレスは、ロイヤルパープルの光沢のあるビロードのプリンセスラインドレスであり、豪華な金の刺繍と宝石が胸元を飾っていた。長いドレープスカートが重なり合い、パフスリーブは袖山が高く、袖口はすぼんでいた。彼女は白の超ロンググローブをはめ、銀のティアラを頭に乗せていた。彼女の姿は、まるで一幅の美しい絵画のようだった。

その周囲を、豪奢な衣装に身を包んだ隣国の王女が冷ややかな笑みを浮かべながら歩き回っていた。彼女のドレスは、姫のドレスに非常に似ており、同じく豪華な金の刺繍が施されていた。赤いシルクの生地が夜空に浮かぶ星々のように輝いていた。その目は氷のように冷たく、皮肉と嘲笑に満ちていた。

「さて、姫の表情がわかるモノはどこかしら？」王女は月明かりに照らされた石畳の上を注意深く探しながら呟いた。「彼女の最後の瞬間をじっくりと知ることができる、素敵なものを探しているのよ。」

そして、ついに王女はそのモノを見つけ、それを拾い上げた。彼女の手には、姫の最後の瞬間が刻まれた表情を映すモノが握られていた。「まあ、これがかの有名な『本国の姫』とはね。」王女はその冷たい表面を優しく撫でた。「こんな無様な姿になるとは、お可哀想に。かつての美貌も権力も、今やただの塵に過ぎないわ。」

王女はその言葉に満足げに笑みを浮かべ、その場を一歩踏み出して遺体に近づいた。彼女の心には、昼間の出来事の感触が鮮明に蘇っていた。「あなたが命を賭して守ろうとしたものすべて、無駄だったのよ。あなたの忠実な臣下たちは、今どこにいるのかしら？あなたの無様な姿を見て、きっと彼らも忠誠心を失ったことでしょうね。」

彼女はさらに声を上げて笑い、その響きは処刑場の静寂を破った。「あなたの夢見た未来は、こうして地に落ちたわ。あなたの国も、あなたの命も、私たちの足元で踏みにじられた。何とも哀れで、滑稽なこと。」

王女は再び姫の姿を見つめ、その冷たくなった髪を指に絡めた。「あなたがどれほどの苦しみを味わったか、想像するだけで愉快だわ。最後の瞬間、あなたが何を思ったのかしら？私たちに対する憎しみ？それとも、自分の無力さを嘆いたのかしら？」

彼女は既に姫のドレスと非常によく似た豪奢なドレスを着ていた。まるで自分が姫そのものになったかのように、彼女は広場を歩き回った。ドレスの重みと質感を感じながら、王女は姫の最期の瞬間を想像していた。「このドレスに包まれながら、あなたがどれほどの恐怖と絶望を味わったのかしら？」

彼女は姫の表情を映すモノを持ち上げ、その無力な姿を見下ろしながら言葉を続けた。「ああ、見て。これが私の最後の瞬間。誰も助けに来ないのね。どうして誰も私を救おうとしないのかしら？私はただ一人、ここでこのドレスを着て、冷たい石畳の上で、無力なまま終わるのね。」

王女は処刑場の入口から跪いて進み始め、まるで舞台劇の一幕を演じるかのように、ゆっくりと処刑台へ向かった。彼女は姫の苦悩と絶望を表情と動作で演じ、見ている者たちにその瞬間を再現して見せた。

「見て、私が無力に跪く姿を。誰も私を助けに来ないのを感じながら、私はただ終わりを待つだけ。」王女は言葉を投げかけながら、まるで自分が処刑される姫そのものであるかのように振る舞った。

処刑台に到着すると、王女は姫の最期の瞬間をさらに劇的に再現した。彼女は頭を差し出し、目を閉じてその運命を受け入れるかのように演じた。「ああ、これが私の終わり。全てが無意味だったのね。」

その後、王女はゆっくりと地面に横たわり、まるで死を受け入れたかのように静かに動かなくなった。彼女はそのまましばらくの間、姫の死体を真似るように動かず、静かにその瞬間を演じ続けた。

しかし、しばらくすると、王女はゆっくりと起き上がり、笑みを浮かべて立ち上がった。彼女の顔には満足感と愉悦の色がはっきりと現れていた。「ああ、なんて楽しいのかしら。こんなに愉快な遊びはないわ。」

王女は軽やかに歩き回りながら、楽しげに笑い続けた。「本当に素晴らしいわ。あなたの最期の瞬間を演じるのは、私にとって最高の娯楽ね。」

彼女は姫の表情を映すモノを手に取り、それを高く掲げて再び笑った。「この瞬間を、私は一生忘れないわ。あなたの哀れな運命を見て、これほどの愉悦を感じるなんて。」

王女はさらに嘲笑を込めて言った。「反論はないのかしら？言い返してみなさいよ。ああ、もう何も言えないのね。どうして黙っているの？あなたの強がりはどこへ行ったのかしら？」彼女は哄笑を上げ、姫の無力さをさらに楽しんだ。

そして、王女は表情を映すモノを地面に投げ捨てた。投げ捨てられた表情を映すモノは石畳の上で転がり、その表面が月明かりを受けて、まるで涙を流しているかのように光った。彼女の無力な表情が、まるで哀しみの涙を流しているように見える錯覚を生み出した。

王女はその光景を見て、冷ややかな笑みを浮かべたまま踵を返した。彼女のドレスの裾が、処刑場の冷たい石畳を擦る音が響く。その背中には、勝利の余韻と皮肉の笑みが滲んでいた。

遺体だけが、無言のまま、冷たい夜風にさらされていた。彼女の運命は、隣国の王女にとっての最高の娯楽となり、彼女の栄光と誇りは、ただの過去の残骸となってしまったのだった。